求人数 139 件 2024/11/21
ベンチャーキャピタル(VC)とは、成長が見込まれるスタートアップへ投資を行い、資金提供や経営支援によって事業の加速・拡大を支援し、IPOや売却を通じて利益を得る投資ファンドや投資会社のことです。
社会課題解決に取り組むスタートアップや、革新的なテクノロジーを持つベンチャー企業の成長を支援できることもあり、ポストコンサルやポストIBD、起業志向のビジネスリーダーの転職先として注目を集めています。
本記事では、ベンチャーキャピタル(VC)業界への転職を希望する方にむけて、ベンチャーキャピタリストの仕事内容、VCの最新の採用動向や求められる人材要件などについて解説します。
まずは、ベンチャーキャピタル(VC)でのキャピタリストの仕事について解説していきましょう。ベンチャーキャピタリストの仕事は、一般的にはファンドレイズ・ファンド管理業務、投資先開拓(ソーシング)業務、投資決定・実行業務、投資先経営支援(バリューアップ)業務、イグジット(Exit)の5つがあります。
投資先開拓(ソーシング)業務とは、投資案件を幅広く集めてアプローチを行う業務のことです。
投資案件の開拓の方法は主に2つあり、資金調達を行うベンチャー企業側から投資検討依頼が持ち込まれる場合と、VC側が有望なベンチャー企業を探索してアプローチする場合に分かれます。
前者のベンチャー企業側からのアプローチされる中には、他VCやブティックM&Aファーム等から持ち込まれるケースも含まれます。
ソーシング業務の要は「ネットワーク構築力」にあるとも言えます。スタートアップへの投資は、複数のVCで共同投資することが珍しくありません。そのため、ベンチャーキャピタリスト同士のネットワークはとても重要となってきます。
他にも、ネットワークがあることで、有望なベンチャー企業や注目すべきテーマ、先端技術に関する情報収集もしやすくなります。キャピタリストの属人的なコネクションが役立つことも多く、腕の見せ所の一つでもあるでしょう。
投資決定・実行業務とは、ソーシングで見つけた投資先候補企業の事業性を評価(デューデリジェンス:DD)し、投資実行の意思決定をする業務のことです。DDの結果を分析し、投資金額や株価、資本政策などを検討して意思決定をします。DDは投資判断だけでなく、投資先企業がExitするために解消しなければならない問題や改善点などを洗い出すという意味でも重要です。
投資実行の判断はキャピタリスト個人の判断だけでなく、社内において投資審査部や会議を実施し、慎重に下すケースが一般的です。
投資先経営支援業務とは、投資実行が決定した後、投資先企業の成長を図るべく、バリューアップのために支援する業務です。
主な業務内容としては経営陣に対する事業推進のためのアドバイス、取引先や提携先の紹介、組織体制の強化、追加の資金提供などを挙げることができます。
社外取締役として深く入り込む場合もあれば、経営者のアドバイザーとなる場合、経営会議などの定例ミーティングに参加するのみの場合など、ハンズオンで支援する度合いはVCの方針や、出資金額の規模やシェアなどによって様々です。
投資実行部隊であるキャピタリストたちがバリューアップまで担う場合がほとんどですが、規模の大きいVCでは、投資先の経営支援業務(バリューアップ)を専門とするチームを別部隊として持っている企業もあります。
数年間にわたる投資先企業へのバリューアップ業務を経て、投資資金の回収業務(主にExit)に入ります。IPO(新規株式公開)やM&Aによって株式を売却し、売買差益「キャピタルゲイン」を得るフェーズです。投資利益の最大化は大前提ですが、投資先企業と売却先のシナジー等も勘案し、適切な売却先を選定します。
VCと一言でいっても、その投資対象や投資スタイル、チーム構成などには各社で違いがあります。一般的にVCは下記4つのグループに分けられます。厳密にはVCごとに異なりますが、グループごとに共通した傾向があります。転職先を検討する際の参考にして頂ければと思います。
独立系VCとは、親会社を持たずに独自の資本で運営しているベンチャーキャピタルです。資本的に独立しているため、親会社のしがらみや影響を受けずに投資を行うことができるというメリットがあります。
アーリーステージからミドルステージまで連続的に投資を行うこともあり、投資先企業を長期的に支援することが多いです。
オイシックスやメルカリを支援したグロービス・キャピタル・パートナーズや、メルカリやラクスルなどを支援したグローバルブレイン、さらにGunosy、UUUM、マネーフォワードなどを支援したジャフコなどは独立系VCの代表的な企業です。
このように、現代では独立系VCが、日本を代表するような新進気鋭のスタートアップ企業を数多く支援するようになりました。かつては金融系VCが主流であった日本のVC業界においても、昨今では独立系VCの存在感がとても大きくなっているのです。
トップクラスの実績を誇る独立系VCでは、報酬面も高い魅力を持ちます。事業会社系や金融機関系VCの場合、所属グループ企業の給与にある程度準じた水準となりますが、独立系の場合は、成果報酬としてインセンティブが支給される場合が多く、成果をあげれば高い報酬を得ることも可能です。そのため独立系VCは、ポストコンサルをはじめとするビジネスリーダーから、転職先としても人気が高くなっています。
【主要独立系VC】
金融機関系VCとは、銀行、証券会社、保険会社などが母体となっているベンチャーキャピタル(VC)です。大手金融機関のグループ企業であるため、比較的規模が大きくなった企業への投資をする傾向があります。堅実な資金調達力や、幅広い金融ソリューションの提供、広範な企業とのつながりなどが強みとなっています。
また、著名な金融グループからの出資を受けることは、出資を受けるスタートアップ企業に、社会的信用力の向上にもつながるというメリットをもたらします。グループの銀行からの融資を受けやすくなるという意味でも、金融機関系VCから出資を受けることは、スタートアップにとって次のステージに進む大きな原動力になります。
【主要金融系VC】
事業会社系VCとは、事業会社が母体となったVCで、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC:Corporate Venture Capital)とも呼ばれることもあります。多くの日本企業において、本業の先行きが不透明になる中、CVCへの期待が高まっており、参入してくる企業が急増しています。
従来は、親会社である事業会社の本業とのシナジーを重視するスタイルのVCが多くなっていました。しかし、昨今では親会社との事業シナジーを優先するのではなく、ファンドとして純粋に投資で収益を上げることを第一に考えるCVCも登場し、大きな成果を上げつつあります。
【主要CVC】
大学系ベンチャーキャピタルとは、研究・技術シーズを事業化するフェーズにある、大学発のスタートアップを支援するVCのことです。一方、政府系ベンチャーキャピタルとは、政府や公共団体が運営主体となっているベンチャーキャピタルです。技術力のある中小企業の支援や国内産業の活性化を目的としています。
これらの大学系・政府系VCは、ビジネス的な伸びしろや投資へのリターンのみならず、新世代の技術力を駆使した産業創出を重視して投資する点が、他のVCとはやや異なっています。
【主要大学系VC】
【主要政府系VC】
VCにおける年収水準は、企業によって大きく異なります。独立系VCは、4つのグループの中で最も年収水準が高い傾向にあります。ご参考までに、ある独立系ベンチャーキャピタルの年収水準のベースをご紹介いたします。
※上記に加え、さらにプロフィットシェアおよびキャリーボーナスが加わります。
金融機関系ベンチャーキャピタルの場合には、給与は親会社に準じていることが一般的です。この場合、キャリーボーナスは支給されませんが、賞与において評価が反映されることが多くなっています。
日本国内におけるベンチャーキャピタル(VC)からのスタートアップ企業への投資金額は増加傾向にあります。2021年の日本国内スタートアップの資金調達額は前年比46%増の7801億円と試算されています。これは10年前の12倍以上の金額(※)です。
このような背景に伴い2022年前半時点においては、多くの主要ベンチャーキャピタル(VC)が規模拡大に注力し、優秀な人材を獲得するために中途採用を積極的に行っています。
もちろん、ベンチャーキャピタル(VC)での採用人数は、コンサルティングファームなどと比較すると小規模であり、狭き門であることに変わりはありません。大手VCでもキャピタリストは数十人、ほとんどのVCは数人程度という、少数精鋭な組織です。採用枠が少ないため、募集が常にあるわけではありませんので、普段から定期的に情報収集をすることが必要となります。
※スタートアップ情報プラットフォーム「INITIAL(イニシャル)」の『Japan Startup Finance』の2021年最新レポートより
人気の高いVC業界への転職は、狭き門となっていますが、下記のようなスキルや経験は、選考時に評価される傾向があります。
VCの役職は大まかに分けてアソシエイト、シニアアソシエイト、マネジャー、ディレクター、マネージングディレクター/ジェネラルパートナーとなっています。
マネジャー以上の役職で転職する場合であれば、VCでの経験を求められる場合がほとんどです。しかし、アソシエイトやシニアアソシエイトレベルへの転職であれば、VC未経験であっても、採用される可能性があります。
VCにおける投資先の支援とは、資金面だけではありません。むしろ、出資後の経営支援こそがベンチャーキャピタリストの真骨頂ともいえる業務内容でもあります。経営支援に精通するコンサル出身者(ポストコンサル)がVCから求められている理由はここにあります。その他、起業経験やベンチャー企業での業務経験、新規事業立ち上げ経験、監査法人でのIPO支援の経験、金融機関や事業会社でのM&A経験などがある場合も、VCへの転職には有利と言えるでしょう。
VCへの転職選考時に英語力が求められることはあまりありません。ただし、入社後にグローバル展開をしている企業の支援や、海外ベンチャーの動向調査を行う機会があるため、英語力があるとアドバンテージにはなり得ます。
「ベンチャーキャピタルに転職する際に、この資格を持っていると強い」という資格はありませんが、公認会計士資格や、海外大学のMBA留学経験などは評価される傾向があります。もちろん、ベンチャーキャピタルに転職することを目的として、公認会計士などの大型資格にチャレンジする必要はありません。むしろ、上述したコンサルティングファームやベンチャー企業での業務経験などの方が高く評価されますので、必要があればそのようなキャリアを経てからVCへの転職を考えることもキャリア戦略として有効と言えるでしょう。
IPO支援や事業投資経験、経営コンサル経験などを持たずに、ポテンシャル採用でVCへ転職を希望する場合、20代半ば~20代後半が望ましいでしょう。この場合、国内・海外問わずトップレベルの大学の出身であることが求められる傾向にあります。海外のMBAホルダーも評価されるでしょう。
VCだけでなく、転職市場においては一般的に年齢が上がるにつれて経験や知識を問われることとなります。30代でVCへの転職を希望される場合は、経営コンサル経験やIPO支援経験、M&A関連の業務経験など、前述の評価される経験が求められることが多くなります。
一方、すでにベンチャーキャピタリストとしての経験がある場合は、即戦力として認められ、アドバンテージとなります。ベンチャーキャピタリストの仕事は難易度が高く、ひとり立ちするまでに一定の時間がかかることは既知の事実のため、優れたトラックレコードを持つ経験者の場合は、年齢は問わず転職も十分に可能でしょう。ただし、VCは少数性精鋭の組織であるため、投資スタイルやカルチャーフィットは慎重に確認される傾向があります。
上記のように、キャピタリストへの転職は年齢と経験をあわせて判断されます。未経験であれば、VC各社の採用意欲を踏まえつつ、なるべく若いうちにチャレンジする方がよいでしょう。
VCにフィットする人物像とはどのような人物でしょうか。
すでにご紹介した通り、キャピタリストの業務内容は「投資先のサーチ、投資検討・判断・実行、投資先の成長支援、IPO/M&Aの支援」と多岐にわたります。
投資先のサーチから始まり、IPOやM&Aでイグジットするまでに渡る一連の業務は、最短でも5年前後の年月がかかることが一般的です。しかも、スタートアップへの投資や育成は、様々な問題の連続です。また、市場や世界情勢の変化を受けやすいため、良い時も悪い時も常に冷静に投資先に寄り添う必要があります。一方で、投資家とも長期にわたり良い関係を築いておく必要があります。どのような状況でも、投資先企業や投資家との良好な関係を築き、長期でコミットし続けることができる人物がフィットします。数多くの困難な場面を乗り越えるだけの高い問題解決能力と精神的なタフネスが必要となってくるでしょう。
また、誠実で信頼に足る人物かどうかも大きなポイントです。専門性や個別性の高いベンチャーキャピタリストの業務の実態は、ファンドの出資者から見えづらいものです。それ故に出資者へ良好かつ透明性の高い説明を行い、信頼関係を築くことができる人物であることが求められます。
ベンチャーキャピタリストは大きな経済的リターンを追求すること以外にも、新たなビジネスや産業を創造していくという醍醐味があります。また、日本のVCのキープレイヤーは数十名という希少な存在です。起業家とともにイノベーションを普及させ、社会の発展に尽力できる仕事の達成感ややりがいは格別と言えるでしょう。
>>ベンチャーキャピタルの年収水準・選考プロセスなどの解説はこちら